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想い出


2022年の9月10月、毎週土曜日に山口新聞 の東流西流 というコーナーでコラムらしきものを書かせていただきました。

2ヶ月間にわたって、毎週、限られた文字数で、自分の想いや気持ちを綴ることは大変な作業でしたが、担当の新聞記者さんのおかげでやり切ることができ、自分と向き合うとても価値ある経験となりました。

有り難いことに「まとめて読みたい」とお問合せいただき、こちらに同じものを載せておきます🙇‍♀️


お彼岸の頃書いた、私の初恋話です💕 思えばこの頃からオジサマ好きだったのね🤣


【想い出】


ハゼ掛けの稲穂と彼岸花。

故郷にUターンしてからずっと会いたいと思っていた人がいた。

その方は町の小さな個人病院の先生で、幼い私が熱を出したりお腹が痛くなると必ず行って診てもらっていた。

とても優しい先生で「おなかを『もしもし?』しようね」と聴診器を当てられ、トントンと触診されるとそれだけで痛くなくなるような気がした。

幼い私はその先生が大好きだった。「せんせえにあげるー」と言って、温かな小さな手に握りしめられていたドロドロに溶けたチロルチョコを「ありがとう」って笑顔で受け取ってくれた先生。

畳の待合室の小さな窓から出される薬は、薄い色の三角に折った紙に包まれていて、苦くて嫌いだったけど。

20年振りにこの町に戻ってきて、ずっとお会いしたいと思っていたのに。きっかけも理由も見つけられないまま「そのうちに、いつか、、」と思っていた。早く会いに行けばよかったのに。

もう小さな女の子じゃないけど、今と違う世界でまたお会いできる時は、先生とおんなじくらいのおばあちゃんかもしれないけど、、、

痛くなくなる気がするから、また診ていただけますか?

(想い出すとき和らぐのはきっと痛いこころ)


(周南市、ベーカリー・ギャラリーオーナー うめざわしのぶ)

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