気持ちつなぐパン屋
2022年の9月10月、毎週土曜日に山口新聞 の東流西流 というコーナーでコラムらしきものを書かせていただきました。
2ヶ月間にわたって、毎週、限られた文字数で、自分の想いや気持ちを綴ることは大変な作業でしたが、担当の新聞記者さんのおかげでやり切ることができ、自分と向き合うとても価値ある経験となりました。
有り難いことに「まとめて読みたい」とお問合せいただき、こちらに紙面のスペース上カットした部分も含めて載せておきます。
【気持ちつなぐパン屋】
パン屋をやろうと決めて、経験を積むために福岡のパン屋で働いていたときの事。もっと早くもっとたくさんと毎日パンを作っていた。一緒に働く新人の後輩に言った言葉「どんなに忙しくっても一つ一つに向き合って作ろう。私たちにとっては何百個のうちの一つかもしれないけどお客様にとってはたったひとつのパンなんだよ」
いま自分のお店では、大切に作られた食材を丁寧に調理して、その食材を作ってくれた人の想いを一緒に捏ね合わせて、食べる人の顔を想像しながら夢を膨らませるように発酵させてパンを焼く。お客様にお渡しして「美味しかったよ、嬉しかったよ、楽しくなったよ」って思ってもらえたらその対価として代金をいただく。現実的に対価は世の中の多くの人がだいたい同じような価値として流通している『お金』なのだけど、でもそれは気持ちのやり取り。本来お金でなくて良い。代金としてお金はいただくのだけど、それは「ありがとう」という気持ちの対価であって欲しい。人の営みの根源にあって、商売の成り立ち。
「何をしてくれてありがとう」「作ってくれて使わせてもらってありがとう」
ありがとうって気持ちでお返しするなら価値が下がることはない。安く買い叩かれることもない。必ず同じかそれ以上のもの(ものでなく労働かも)で返す。それぞれに利益があるように。そうやって経済が回っていくといいな。
(周南市、ベーカリー・ギャラリーオーナー うめざわしのぶ)
Comments